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with Creators 坂牧良太さんインタビュー

【Interview】見られたくない、人の本質を描き出す。映画監督&脚本家 坂牧良太さんインタビュー

【Interview】見られたくない、人の本質を描き出す。映画監督&脚本家 坂牧良太さんインタビュー

クリエイターインタビューでありながら、「僕の場合はクリエイターではない」と話す映画監督&脚本家の坂牧良太さん。

デビュー作である自主制作映画『こぼれる月』(2003年)では監督として演出だけでなく、脚本から編集、仕上げとほぼ一人で工程を手掛け、苦戦しながらも完成した作品は各国の国際映画祭で注目されました。

フランス・ドービルアジア映画祭ではDVコンペティション部門でグランプリを受賞しています。

映画だけでなく、舞台の演出も行っており、役者の演技指導なども力を入れていらっしゃいます。

自身を『なんでも家』と称する坂牧さんの作品を作る秘話や作品に込める思い、映画監督と脚本家になるまでの経緯、そしてこれからについて語っていただきます。

No.1坂牧良太さんの経歴

坂牧 良太(さかまき りょうた)

【経歴とプロフィール】

脚本・監督 1975年、東京生まれ。

デビュー作品「こぼれる月」(2003)は各国の国際映画祭で脚光を浴び、同作品はフランス・ドービルアジア映画祭ではDVコンペティション部門でグランプリを受賞する。

以降映画、DVDシネマ、テレビドラマの演出を手がける。舞台も積極的に行っており、実際に起きた事件をモチーフに描いた、「ひかりをあててしぼる」や感情を失う病に犯された夫婦の葛藤を描いた「エモ・ロス」などを演出している。

最新作は自作の舞台を映画化した忍成修吾、派谷恵美主演の「ひかりをあててしぼる」。

この作品でアメリカ・Tabloid Witch Awardsで日本人初の最優秀作品賞と最優秀主演女優賞を受賞した。

東欧最大の映画祭トランシルヴァニア国際映画祭に正式出品し、ユーロスペースにて公開。

【実績】

2003年『こぼれる月』

          *フランス・ドーヴィル国際映画祭 最優秀デジタル作品賞

2016年『ひかりをあててしぼる』

          *アメリカ・Tabloid Witch Awardsにて最優秀作品賞・最優秀主演女優賞

No.2俳優から監督へ

10代に舞台俳優の経験もある坂牧さん。

今の仕事を始めることになった経緯、そして俳優になったきっかけについても聞いてみました。

「外に出ないとやばい」という危機感から俳優に

昔から映画が好きな坂牧さん。

それなら俳優や監督を目指すのはとても自然に感じます。

ですがそこには、精神疾患を抱えた若者を描くデビュー作『こぼれる月』につながる、ご自身の辛い過去がありました。

坂牧「実は10代前半、精神的な病を抱えて、登校拒否をしていたんです。

今でこそ”ニート”や”引きこもり”という言葉ができて世間の認識も広がり、理解されやすくなっているとは思いますが。当時は登校拒否というと、それはもう「社会から逸脱したとてもいけないこと」みたいに思われていた時代です。

そんな頃、僕は3年くらい引きこもって映画ばかり観ていました。とにかく映画の世界にはまっていましたね。

でもある日、「これ以上ずっと家にいたら自分自身がダメになってしまう。どうにかしなくては」と危機感が芽生えたんです。

外に出ようと考えたときに、何をしようかと子どもながら自分を振り返ってみたんですよね。

映画が好きだし、作品を形どる俳優に興味を持ちました。そこで、俳優になってみたいと。

今思えば子どもながら安直だったかもしれませんが、この思いが外に出るという勇気を与えてくれたんですよ。

それが俳優に目指したきっかけです。」

 

尊敬する師匠の一言がきっかけで監督に

俳優から今度は監督の道に進む坂牧さん。

ここで、人生の転機となる師匠との出会いがありました。

坂牧「俳優として演技の面白さや奥深さに驚かされながらも日々励んでいました。多くの舞台に立たせてもらったのは良い思い出です。

一つ後悔していることは、俳優として大きな規模の舞台で良い役をもらったことがありまして。でも、その現場が辛すぎて中途半端な形で逃げてしまったんですよ。

逃げてしまった自分を反省し、後悔ばかりしていられない、次に繋げたい!と、なんとか業界にしがみつこうと思って挑んだ短編映画のオーディションを受けました。

このオーディションには残念ながら落ちてしまったんですが、その映画のワークショップで監督に、映画を撮ってみないか?と声をかけてもらったんです。

その言葉を当時の僕は真に受けてしまって(笑)、撮りたい!撮ろう!と本気で作りましたね。

必死に100万円くらい貯めて撮影機材を購入、役者仲間を集めて、映像編集のためにパソコンを買ったりとか。

当時はまだ機材も高かったのを覚えています。

それで完成した作品を監督に見せたら、本当に作るとは思っていなかったって言われました(笑)」

 

最後にしがみついたオーディション。そこで出会ったのが、監督でもあり師匠だったわけですね。

師匠の一言で作ることとなった作品では、坂牧さんの過去の経験や社会に伝えたいメッセージが込められています。

映画を作ることで、僕自身が助けられた

坂牧「映画を作ることは本当に大変なことでした。

物理的なものももちろんありますが、僕が一番苦手な“人間関係と向き合わなくてはいけないから”です。人との関係性なくして映画を作り上げることは不可能。

しかも作りたいと思ったのが、僕自身経験して辛かった精神的な病をテーマにした作品。

自分の症状をキャラクターに乗せてお話づくりをして、さらにそれを映像として描くのがつらくて……。

それでも、病を抱えても上手に付き合いながら生きている人がいるということを物語に投影し、世の中の人たちに伝えたかった。その一心で制作しました。

最終的には、周りの優しいスタッフに支えられ無事に完成させることができました。

当時は「大変すぎて、もう二度と作りたくない」と毎日言ってましたね(笑)

人間関係が苦手でしたが、映画のおかげで人と一つになれたことを実感できました。」

 

作品が完成後、2年の歳月を経てやっと劇場公開にまでこぎつけた坂牧さん。

「大変すぎて、もう二度と作りたくない」という言葉とは裏腹に、語る熱量が冷めることはありませんでした。

No.3人の内面に焦点を当てる表現が得意

坂牧さんの作品を観るには相当な覚悟が必要かもしれません。

その理由は、残酷なまでに人間の弱さ・痛み・悲しみが映し出されているから。

坂牧さんに、映画を2作品とも観たことを伝えると「ありがとうございます。それは大変でしたね」という言葉が返ってきて、思わず「はい。」と答えてしまうほど。

人の内面をあぶりだすような表現が、やはり得意なのでしょうか。

坂牧「そうですね、僕自身も精神的な病を抱えていたので、人間の内面に焦点を当てた物語作りは得意です。

人が持つ”闇”に”光 “も入れて。最後には希望が持てるような話が良いですよね。

「ひかりをあててしぼる」は海外ではホラー作品と紹介されましたが、ホラーとして作った訳ではないのです。国によって作品の捉えられ方が変わるのが面白いなと思いました。

人に見せたくない部分って誰でもありますよね。それを描けるのが物語だと僕は考えています。

綺麗事で済まそうとするのではなく、僕は人間のみっともない部分までしっかり表現します。」

 

No.4思い入れのある作品を挙げるなら、『ひかりをあててしぼる』

舞台や映画作品など幅広く手がける坂牧さん。

坂牧さんにとって、特に思い入れのある作品はどれなのか聞いてみました。

坂牧「実はどれも思い入れがありません(笑)

というのは、一度撮ったらすべてをやりきってしまうので、終わったと同時に一旦頭の中がリセットされるんです。

登場人物の名前でさえ忘れてしまうほど。でもそれだけ、一つ一つの作品に全力を注いでいます。

作品はどれも自分の子供のように大事に思っています、本当はね(笑)」

 

意外な答えに驚きましたが、理由を聞いて納得です。

それでも一つだけ挙げるとするなら、どの作品なのでしょうか。

坂牧「そうですね。一番たくさんの方に観ていただいている『ひかりをあててしぼる』です。

本当にこれまで以上に、観ていただく機会を作ってくださっています。なので一番、大事にしている作品でもあります。」

 

No.5デビュー作を超える作品を作りたい

最後に、これからの目標と抱負についてお話しいただきました。

目標にしている監督や、どんな作品で表現しようとされているのか、とても気になります。

大きな二つの目標

坂牧「分かりやすく言うと、図々しいですが、韓国映画の監督”イ・チャンドン”を目標にしています。

あんな風に人間の本質を描きたいですね。

でも一番はやっぱり、オリジナルの作品が撮りたいです。

構想の一つとして、デビュー作『こぼれる月』を超える作品を作りたい。

日本人もそろそろ欧米のように、精神的な病気に対しての考え方をアップデートしてほしいと思っています。

『こぼれる月』は病気で辛いというイメージの強い作品。

でも今度はつらいだけではなくて、もっと希望も入れた作品を今度は作りたいです。

実際に、精神的な病気を抱えていても、上手に付き合って社会に出ている人はたくさんいます。

病気を毛嫌いするのではなくて、付き合う方法があることをもっと知ってもらうような作品を作りたいです。」

 

アフターコロナの葛藤

目標を掲げる坂牧さん。

ですがその次に切り出したのは、その表現方法についての葛藤でした。

エンタメ業界だけではなく、社会的にも大打撃を与え続けているコロナ。

作品作りの足枷になっていることは、容易に想像できます。

坂牧「今、どのクリエイターも問題視しているのが”アフターコロナ”や”ウィズコロナ”だと思います。

そのフィルターが掛かってしまうと、今まで描いていたものが描けなくなる。

例えば僕の作品でもラブシーンを要素として入れていますが、コロナのせいで描きにくいですよね。

人と触れるのが難しくなったからこそ、心でも体でも、人間同士の触れ合いを描きたいです。

コロナが存在している現状こそがSFみたいなものと捉えているので。

そのフィルターの上で表現するって、難しいですよね。」

 

そんな中、2020年秋に舞台を上演した坂牧さん。

一緒に作り上げた出演者やスタッフ全員で頑張って、成功されたそうです。

その舞台で、上演中に起きたちょっとした出来事で現実を突き付けられました。

坂牧「上演中、会場の客席から咳払いが聞こえたんです。

その瞬間、会場内の意識と視線とがそちらに持っていかれましたのを感じました。

一瞬で会場の空気が演劇とは関係のない現実的な緊張感に包まれてしまいました。

これも新型コロナの影響ですよね。僕達はこんな中で表現をしているんだ、という現実を突き付けられましたね。」

 

未だかつて誰も経験していない新型コロナという未知のウイルス。

その影響を坂牧さんは表現者としてどうやって乗り越えようとしているのか、聞いてみました。

坂牧「プラットフォームはなんでもいいので、やれることがあれば、どんな方法でも表現していきたいです。

映画作品、舞台に限らず、必要とされているのであればなんでも。

僕にできるのは物語を作ること、というのは今後も変わることはありません。」

 

No.6まとめ

痛いほどの人間の内面を描き出す坂牧さん。

デビュー作が自主映画、さらに俳優の経験もある特殊な経歴も。

きっとこれからも、人間の本質を見抜いて描き出してくれるのではと期待しています。

最後に、今年中に短編を1本撮る予定であることもお話しいただきました。

そして現在、大好評の『ひかりをあててしぼる』が、U-NEXTとAmazonプライムで公開中です。(2021年1月現在)

まだ作品をご覧になっていない方はぜひ、お楽しみください。

坂牧さんのデビュー作『こぼれる月』を超える作品や、今後のご活躍を大いに楽しみにしています。

(2021年2月)

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