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with Creators 戸田彬弘さんインタビュー
【Interview】演劇から学んだ、対”人”との関係からヒューマンドラマを描く。戸田彬弘さんインタビュー
映画だけでなく、舞台やテレビドラマ、CM、MVなど、幅広いジャンルでの作品作りをされている戸田彬弘さん。
その作品へのかかわり方も、監督、脚本や演出、プロデュースなどと多種多様です。
また、劇団チーズtheatreの主宰もしており、演技講師として若手俳優への指導をされることもあります。
そんな多才な戸田さんですが、なんと映画は独学で撮り始めたとのこと。
どのようなことがきっかけで、映画の世界へ飛び込んだのでしょうか。
今回は、戸田さんの今に至るルーツとともに、「たくさんある」というこれからの目標について語っていただきました。
No.1経歴とプロフィール、主な実績
戸田彬弘さん
https://www.cheese-film.co.jp/
【経歴とプロフィール】
1983年、奈良県生まれ。
株式会社チーズfilm代表/チーズtheater主宰/日本劇作家協会会員/映画監督/脚本家/演出家
長編劇場デビュー作品は「ねこにみかん」(2014年)。同作品で、第1回新人監督映画祭長編コンペティション部門の準グランプリを受賞。
以降、数々の映像作品だけでなく、舞台の脚本、演出、多数のMVやCMディレクター、番組ディレクターとして、多方面で活動している。
最新作は【MOOSIC LAB [JOINT] 2020-2021】で上映される「僕たちは変わらない朝を迎える」。
4月末には演出を手掛ける舞台公演(たやのりょう一座)が予定されている。
*【MOOSIC LAB [JOINT] 2020-2021】
2021.2.27(土)〜4.16(金)K’s cinemaなどにて開催。
MOOSIC LAB Twitter→https://twitter.com/MOOSIC_LAB
映画「僕たちは変わらない朝を迎える」
Twitter→https://twitter.com/bokuasa_film
*たやのりょう一座公演
サイト→https://www.tayanoryo1za.com/blank
Twitter→https://twitter.com/tayano_ryo_1za
【受賞・入選実績】
2011年「夕暮れ」-映画(監督、脚本)
第9回中之島映画祭 グランプリ
福井映画祭2011 グランプリ
福岡インディペンデント映画祭2011 優秀作品賞
2011年「適切な処理」-映画(プロデューサー)
シネアストオーガニゼーション大阪大阪市長賞 グランプリ
2015年「父ありき、母のにおい」-映画(監督、脚本)
沖縄国際映画祭2015 地域映画部門
2015年「まなざし」ー映画(監督、脚本)
Short Short Film Festival2015 music short部門
札幌国際短編映画祭コンペティション部門正式出品
SJ(シンガポール・日本)50映画祭正式招待
2015年「ねこにみかん」-映画(監督、脚本、プロデューサー)
伊賀の國忍者映画祭2014地ムービーアワード受賞
第1回新人監督映画祭長編コンペティション部門 準グランプリ
2015年「川辺市子のために」-舞台(作・演出)
サンモールスタジオ選定賞2015 最優秀脚本賞受賞
2018年「名前」-映画(監督)
第13回大阪アジアン映画祭クロージング作品正式招待
第20回イタリア・ウディネ・ファーイースト映画祭コンペティション部門
第18回ドイツ・フランクフルト・ニッポンコネクション・ニッポンヴィジョン部門
第5回ハノイ国際映画祭コンペティション部門
オランダ・ロッテルダム・ジャパンカッツ正式出品
No.2たまたま見つけた趣味から映画の世界へ
戸田さんは、近畿大学の文芸学部芸術学科舞台芸術専攻(旧・演劇芸能専攻)在学中から映画を撮られるようになりました。
その進路を選ばれたということは、元々演劇が好きだったのかと思っていたのですが、返ってきたのは意外な答えでした。
戸田「きっかけをよく聞かれるんですけど、特にこれと言ってないんですよね(笑)
高校までサッカーをしていたんですが、引退したタイミングで、趣味を探そうと思った時に、あんまり映画とか見たことなかったんですけど、近所のレンタルビデオ屋さんで、ビデオを借りてきて。
4本1,000円だったので、1週間レンタルして、返すついでにまた4本借りてくるという生活をしていました。そしたら、だんだん映画を見るのが好きになっていることに気付いたんです。」
それまでは映画とも無縁な生活をしていたところに、たまたま見つけた趣味がビデオでの映画鑑賞だったとのこと。
その後、親に言われるように受験勉強を始め、高3の夏に通っていた予備校の先生から、「映像の勉強ができる大学がある」と勧められたのが、近畿大学だったそうです。
戸田「当時、特にしたいことなくて、ただぼんやり、映画好きだから映画の配給会社とか、映画に関わる会社に行けたらいいなと思っていました。
なので、他の大学とか学科を探さず、純粋に「映画の勉強ができる大学がある」というそこを推薦で受けたら合格して。じゃあ、合格したから行こうと考えたんですよ」
大学に入ったら思っていたのと違った!けれど…
いざ大学へ入学した戸田さんですが……
戸田「なんとその学科は授業の8割が、演劇(舞台)について学ぶ学科だったんです(笑)
1年生では映画に関わる授業が1コマもなくて、2年生になってからやっと1コマあるという感じだったんで衝撃ですよね」
戸田さんが学びたいと思っていた、映画(映像)をすぐ学べる学科ではなかったそうです。
入学するまで気付かなかったなんて!と私も聞いていて驚きましたが、ご本人はもっと驚きましたよね(笑)
戸田「ただの自分の惰性ですけど…そうなんですよ(笑) だから、大学を辞めようかとも思ったんですよね。
でも両親に反対されて仕方なく行っていたところ、今にもつながる人たちとの出会いがありました。」
面白く個性的な同期3人との出会いが、大きな転機に
戸田「大学の同期で、面白くて個性がある3人と仲良くなりました。
NSCで芸人目指しながら演劇を学んでいた人、演劇を元々やっていたサブカルに詳しい人、文学や映画に詳しい人の3人です。
それぞれ個性があって、いろんな分野に詳しくて。仲良くはなったものの、僕だけ何もないなと感じたので、僕も好きな映画を突き詰めよう! 勉強しよう! と思いました。
それから批評家の本を買ったり、映画をもっと観たりするようになりました。」
同期3人との出会い。
戸田さんに大きく影響を与えてくれた、その同期の方たちとは今も仲が良く、お付き合いがあるそうです。
刺激し合える仲間がいるということは素敵なことですね。
また、戸田さんが「映画を撮ろう!」と思ったきっかけをくれたのも、その同期のご友人。
戸田「仲良しの同期のうちの2人が、自分の作品を作るようになったんです。それで僕も『自分も何か作りたい!』と思ったんですよ。
それで、2年生の春休みに自主映画を撮って、それをある映画祭に応募したらなんと通って。
全国のTSUTAYAの大きな店舗に自分の作品が並んだんです。
それが自信になって、3年生の冬にも1本撮りました。
そのころには就職はせずに、映画の世界で生きようと考えていましたね。」
初めて撮った映画が、全国のTSUTAYAに並ぶ。
その経験が戸田さんの制作意欲を沸き立て、また大きな自信に繋がっていったんでしょうね。
しかし、独学で撮った映画が入選って、すごいです。
演劇の大学だったからこそ、今があるのかもしれない
大学では演劇の劇作理論を専攻していた戸田さんですが、演技コースの授業もとれたので、演技も始めました。
戸田「毎日朝から18時頃まであった授業を受け終わってから演劇の稽古をし、その後深夜のバイトに行くという生活を4年間続けました。
ハードだったけれど、”みんなでものを作っていくことの楽しさ”を学べたのは、このときのおかげです。
映画よりも演劇は、俳優との関わりが濃密だと思います。まず、演劇は人がいないとできないですし、うちの大学は先輩や後輩、卒業生とのつながりも濃い。
常に稽古や舞台の本番、本番があれば打ち上げもあって。
そういう時間が楽しいと思わせてくれた同期や先輩がいたからこそ、今の自分があると思っています。」
舞台にはできる限り参加していて、年間6本から7本上演していたとのこと。
他にも、コンテンポラリーダンスの授業や公演もあって、ダンサーとしても出演していたそうです。
忙しい中でも、みんなでコミュニケーションを取りながら、作品を作り上げていく楽しさを大学で学ばれたのですね。
戸田「もしかしたら演劇の学校ではなく、映画の専門学校とか大学を出ていたら、映画撮っていないかもですね(笑)」
映画について学べると思い込んで入学した大学で、偶然出会った演劇の世界。
選択を間違ってしまった、と一時は感じたものの、その中で今に繋がる出会いもあり、そこから好きな映画の世界へも踏み込んでいけたとのこと。
単純に学びたいことを学んだだけでは手に入れられなかった経験こそが、今の戸田さんのルーツと言えるのではないかと思いました。
No.3演劇を通して築いてきた、人との濃密な関係が作品作りにも
作品を作るという作業は、大量のアウトプット作業。
自分の中から生み出すのには、たくさんの活力が必要とされると思うのですが、戸田さんはどのようなところから、作品のテーマなどのアイデアを得ているのでしょうか。
普段の生活で、意識的に作品作りのヒントにされていることはあるのか尋ねました。
戸田「日常の中で気になること、感じることは作品を作るとき、テーマのきっかけになることはありますね。
テレビのドキュメンタリーなどは意識的に見ています。毎週録画して、気になるものがあれば見るというような。
最近は特に、実際に起こった、世の中を震撼させた事件や、犯人に興味があることもあります。
例えば、秋葉原の通り魔事件を起こした、加藤智大。彼自身に興味が出て、調べたり本を読んだりしました。
いつかやってみたいテーマですね。
また、今も相模原障害者施設殺傷事件をテーマに、1本書いているんです。
そこから見える社会のひずみや、なぜ行動を起こしたのか、起こすところまでいってしまったのかなどから、人間の本質や社会の問題が見えてくるのではないかと。
社会的弱者とされる人たちのことも書きたいと思っているところはあります。」
事件そのものよりも、なぜ人が行動を起こしたのか、その背景には何があったのか、そういったより深い心理に興味があるのではないかと語る戸田さん。
その”人間の本質”という着眼点は、演劇を通して人との濃密な関係を築いてきたという経験からも、繋がっているところがあるのかなと感じました。
俳優とのコミュニケーションからドラマを作っていく
戸田「でも、こうして社会的な事件のことを話しましたが、実は1回ぐらいは壁ドン・胸キュンみたいな青春映画もやってみたいところはあります(笑)意外に思われるかもしれませんけど!」
社会的なテーマでの作品作りのことをお話されていたのに、突然180度回転したようなキラキラした恋愛映画も撮ってみたいと(笑)
これには思わず一緒に大笑いしてしまいました(笑)チャレンジしたい気持ちがあるって素敵です。
まだ、こうした恋愛ジャンルには挑戦はしたことがないとのことでしたが、逆にやってきた中で得意なジャンルなどはあるのでしょうか。
戸田「これまでジャンルなどは、特に自分の中ではこだわっていないのですが、例えばビジュアルだけを見せるMV(ミュージックビデオ)などは向いていない気がします。
ドラマを作り、内容を深めていくことの方が興味もあり、好きですね。
自分で思うに、自分自身も演劇をやっていたので、俳優とのコミュニケーションや俳優との関係性の作り方は多少得意なのかなと思っているので、芝居を作っていく方が得意なのかなと思っている次第です。」
俳優さんとの関係性ももとに、一緒に作品を作り上げていく。
ここにも、演劇の経験が繋がっているんですね。
No.4作品を撮ったら見返したくない
これまで作られた作品で、数々の賞を受賞されている戸田さん。
ご自身の中で思い入れのある作品はどの作品なのか聞いてみました。
戸田「初めて商業映画でデビューした映画は特別ですね。あと、『名前』は初めて自分の企画ではなく、企画をいただいて作った作品という意味では思い入れはあります。
海外のレッドカーペットを歩いたのも、この作品が初めてでした。」
『名前』は津田寛治さん、駒井 蓮さん主演、2018年公開の映画。
直木賞作家の道尾秀介さんが書き下ろした原案を元に映画化され、戸田さんがその監督を務めました。
※映画『名前』
公式サイト→https://namae-movie.com/
過去の作品は自分で見たくない
ただ、自分の過去の作品は見たくないのだそうです。
戸田「撮った作品を見返すと、自分ではあらが見えるので、正直あんまり見たくないです(笑)
他の監督さんの中には、自分の映画を一度はスクリーンで見るという人もいるんですが、絶対僕は見たくないですね。
お客さんが観ている中でなんて、見れないです。スタッフキャストと一緒に見る会などもありますが、あれは拷問だと思っているので(笑)
できれば見たくない(笑)」
コロナ禍で撮影した「僕たちは変わらない朝を迎える」
2020年の年末に映画「僕たちは変わらない朝を迎える」を撮影されたということですが、コロナ禍の撮影で、大変だったことはあるのでしょうか。
戸田「今回の映画では、主演の2人にキスシーンがあったため、クランクイン1週間前にPCR検査を受けてもらいました。
ただ、そこで陽性だった場合、主演の代役を立てるのか、撮影を延期するのかの判断が必要でした。
今回、自分で監督とプロデューサーをやったんですが、監督としては撮影を延期して、万全な体勢でやりたい。けれど、プロデューサーとしては、予算の関係もあるので、代役を立てるしかないという葛藤もありました。
なので、2番手のキャスティングも実は立てていました。」
とても大変な中での撮影だったんですね。
戸田「普通の映画でも撮影前に大けがしたら、代役や延期となるけれど、今回は新型コロナの影響を実感しましたね……
でも、その他の心境的なものに変化はなく、作品としては変わらず、いいものを作れたらいいなと思っていました。」
「僕たちは変わらない朝を迎える」は、2021.2.27(土)〜4.16(金)K’s cinemaなどにて開催される、【MOOSIC LAB [JOINT] 2020-2021】で上映されます。
その後、全国の劇場公開も予定されています。
No.5自分の新しい価値観やテクニックを切り開いていきたい
ご紹介してきたように、これまでも今までも多方面で活躍され、お忙しい戸田さんですが、今後の目標や抱負を伺ってみました。
もう一度勉強がしたい、インプットがしたい
戸田「今すごくもう一度勉強がしたい、インプットしたいと思っています。自分が今まで作ってきた方法ではない、作り方をしてみたい。
こんな作品を作りたいという目標ではなく、自分の新しい価値観やテクニックなどを、もっと取り入れてやりたいです。
いっぱい読みたい本、観たい映画もたくさんあるので、そんな時間が取れればいいなと思います。
普段も他の方の作品を見たりはするんですが、クランクイン前とか、自分に影響されちゃうときは見ないようにしているから、溜まってしまって。
あと、時間かけて本気で1本作りたいとも思っています。
もちろんどんな仕事もいつも本気ではあるんですが、スケジュール締め切りという制限の中でやるのではなくてじっくりと考え抜いた1本を作ってみたいと」
1月初旬にドラマの脚本も手掛けられた戸田さん。(西荻窪三ツ星洋酒堂 第5話)
ドラマにも大変興味があるようです。
戸田「今回は連ドラの中の1話だけ脚本を担当したのですが、連ドラの監督もやりたいというのもあります。
連ドラという時間間隔でしか描けないもの、描き方があると思うんです。
映画や演劇って時間芸術でもあるので、2時間という時間の中で、お客さんにどういう風にその時間を体験してもらいつつ、どう内容を描くかというところがありますが、連ドラはそうではないですよね。
1時間ドラマだと、1時間見て1週間空いて、また1時間見る。そうすると、間1週間という時間的な距離ができる。
その中で、全体でのテーマがあって、1話1話のテーマもある、そういう描き方に興味があります。」
どんな作品にも時間があり、その時間の使い方が違いますが、それぞれの特性を活かした作品を作りたいと思う戸田さん。
是非、そんな戸田さんが描く連続ドラマを見てみたいですね。
書くということに慣れるルーティンを作りたい
戸田「あと、小説も書きたいです。”書く”ことは大っ嫌いですけど(笑)
なので、習慣として毎日30分は書く時間を作れたら と思っています。
なんて言いつつまだ全然やれていないんですが、内容は日記でも、何でも。
ただ、毎日書くというルーティンを作りたいです。
書くことは好きじゃないけれど、書くことが求められているなと感じてはいるんです。
ドラマもこれまで脚本は担当しましたが、監督としてはまだ呼ばれていないので。
もう一度勉強がしたいと言いましたが、演劇は大学の授業で少し学んだものの、映画の脚本術は学んでいないんですよね。
だからしっかりやりたいです。」
やりたいことがいっぱいで、目標もたくさん。
目標は?と聞いただけで、こんなにもやりたいことをたくさん挙げられるのは、素敵だなと感じました。
戸田「本当は何もやりたくはないんですけど(笑)」
ともおっしゃっていましたが…(笑)
戸田さんのお茶目な一面を見せてもらいました。
No.6まとめ
時折冗談も交えながら、これまでのことや展望などをたくさん語ってくれた戸田さん。
映画とは無縁だったサッカー少年が、演劇や人との出会いから今に繋がるという、偶然の重なったルーツも大変面白く、戸田さんの穏やかな人柄を感じさせてくれるお話でした。
また、これまでとは違った表現方法や価値観を学んでいきたいという意欲的な姿には、尊敬するとともに、「新たな戸田ワールドをもっと観たい!」とワクワクしました。
ジャンルを問わず、今後どのような作品で私たちを魅了してくれるのか、とても楽しみですね。
▼このクリエイターに依頼
https://directcreators.jp/pj/portfolio?id=17
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