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with Creators 井上博貴さんインタビュー

【Interview】幅広い分野での経験を元に多様なニーズに応える。映画監督井上博貴さんインタビュー

【Interview】幅広い分野での経験を元に多様なニーズに応える。映画監督井上博貴さんインタビュー

今回インタビューさせていただいたのは、劇場公開映画だけでなく、ドラマやCM、MVなど、幅広く映像作品作りをされている監督の井上博貴さん。

監督としてだけではなく、脚本や編集も自ら手掛けた作品も多いのが特徴です。

過去には大手企業の映像制作部署に在籍し、商材動画なども多く作られてきました。

そんなジャンルや媒体を問わず、多方面で活躍されている井上さん。

井上さんの映画監督になったきっかけや、作品作りへの姿勢などを伺いながら、井上さん自身や作品の魅力に迫ってみました。

No.1経歴とプロフィール、主な実績

井上博貴さん

【経歴とプロフィール】

1971年、福岡県生まれ。

映画監督/脚本家/演出家

早稲田大学 社会科学部卒業後、フリーランスの助監督、制作として映画、ドラマ、CMなどの映像制作に関わる。

また、石井プロダクションに参加し監督・故石井輝男に師事する。

映画『パニック4ROOMS』(2009年)にて監督デビュー。

2011年からは大手企業の映像制作部署へ8年間在籍し、Web CM、サービス&商材訴求映像に携わる。

2020年には、就活を企業側の目線で描いた作品『新卒ポモドーロ』や、人気漫画を原作とし監督を務めた『LOVE STAGE!!』が公開された。

【受賞・入選実績】

2009年 映画『どんぐり兄弟の梅干』(脚本、監督)

*福岡インディペンデント映画祭 最優秀作品賞&90分部門グランプリ

2012年 短編映画『777号に乗って』(脚本、監督)

*福岡インディペンデント映画祭 優秀賞

*映文連アワード2012 パーソナルコミュニケーション部門 優秀賞

*第4回伊勢崎映画祭 グランプリ

*第5回武蔵野映画祭 グランプリ

*第16回月イチ映画祭 グランプリ 他

2013年 短編映画『のぶ子の日記』(脚本、監督)

*福岡インディペンデント映画祭 グランプリ

*東広島映画祭ショートフィルムコンペティション 最優秀作品賞

*西東京市民映画祭 最優秀作品賞&西東京市長賞&奨励賞

*第9回東葛映画祭2013 審査員特別賞 他

2014年 短編映画『恋する河童』(脚本、監督)

*第3回映画少年短編映画祭 グランプリ

*映文連アワード2015 パーソナルコミュニケーション部門  優秀賞

*松本商店街映画祭 準グランプリ

*那須国際ショートフィルムフェスティバル 那須FC特別賞 他

2015年 短編映画『夕暮れの催眠教室』(脚本、監督)

*Skipシティ国際Dシネマ映画祭 短編部門 奨励賞

*札幌国際短編映画祭 オフィシャルセレクション オフシアター部門上映

*ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2016 ジャパン部門ノミネート

2017年 短編映画『宝池に寄り道を』(脚本、監督)

*ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2017 キテミル川越ショートフィルム大賞グランプリ

2017年 短編映画『痣』(監督)

*カンヌ国際映画祭上映

*ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2018ジャパン部門ベストアクトレス受賞 他

No.2映画「ワイルドパンチ」に衝撃を受けて…

今の井上さんのルーツはどこにあるのでしょうか。

まずは映画に興味を持ち始めたきっかけをお尋ねしました。

「映画を見るのが好き」から、「映画を撮りたい」へ

井上「元々はジャッキー・チェンが好きで、映画を見るようになりました。

それからハリウッド映画をよく見るようになったんですけど、映画を撮りたいなと思ったのは、サムペキンパー監督の『ワイルドパンチ』という映画がきっかけです。

これまで勧善懲悪のストーリーの映画ばかり観ていたので、武骨なアウトローたちにフォーカスし、滅びの美学を描いた作品に、青天の霹靂というか、衝撃を受けました。

そこから映画の魅力にハマったというのがあると思います。これが高校三年生くらいの時ですね。」

映画を見るのが好きというところから、「映画を撮りたい」と気持ちが変わるほどの作品との出会い。

「ショックのようなものを受けた」と表現されていましたが、井上さんにとって、よほどの衝撃だったことが伺えます。

そんな映画を作ってみたいという気持ちから、実際に映画を撮り始めたのが、大学時代。

映画サークルに所属し、近しい劇団の人やサークルの仲間に出演してもらい、自主映画を作り始めました。

大学時代は日本映画の魅力にもハマり、近しい劇団の人やサークルの仲間に出演してもらいながら、若い人が主役の映画を多く撮っていたそうです。

プロの現場へ呼ばれ、映画を仕事にしようと意識し始めた

大学のサークルで自主映画を作る中で、映画監督の道を”職業”として意識し始めたのはいつ頃なのでしょうか。

井上「きっかけは、プロの現場に呼ばれたことです。

大学のサークルの先輩が監督をしていて、制作現場に助監督が足りないから来ないかと声をかけてもらいました。

その現場を経験してから、仕事としていくことを意識し始めたと思います。」

卒業後はフリーランスの助監督などを経て、30歳くらいまでは現場を中心に経験を積まれていきました。

30歳を超えてから、現場の仕事もしつつ、自分でディレクションの仕事をやったり、映画であればメイキングの仕事などをするようになったそうです。

大手企業の映像制作部署で経験を積む

そんな経験を積む中、転機が訪れたのは40歳の頃。

2011年の東日本大震災がきっかけでした。

井上「震災があり、自分のやろうと思っていた仕事がなくなってしまったんです。

その時に大学のサークルの後輩が大手企業の映像制作部署で働いていて、そこがたまたま人員を募集していたので

業務委託として勤務させてもらいました。」

その後、大手企業の映像制作部署に8年間在籍。

Web CM、サービス&商材訴求映像に携わっていたようです。

それにしても、映画監督になることを意識し始めたのも大学時代の先輩からの誘いがきっかけであり、

大手企業の映像制作部署へ入ったのも大学時代の後輩がきっかけ。

大学時代のサークルの繋がりは大きかったんですね。

井上「大きいですね。今でも業界の人でサークルの仲間は多いです。」

要所要所のきっかけになってくれているとは、とても心強いでしょうし、素敵なご縁ですね。

No.3「突拍子もない題材をどう現実的に見せていくか」を考える時間が楽しい

大手企業の映像制作部署に在籍中には、なんと年間80本以上もの撮影をされていたという井上さん。

こんなもたくさんの作品作りを続ける中で、やりがいを感じる部分や、楽しいと感じるところを聞いてみました。

取材を通し、話を繋げていく作業が楽しい

井上「楽しいと感じるのは、撮影以外ですね(笑)」

撮影以外?!

そのきっぱりとした答えに少しびっくりしてしまいましたが(笑)、作品を作る上で好きな作業は脚本を書くことと、編集だそう。

井上「脚本を書く前に取材をするのですが、話を聞いていくうちに、自分の中でストーリーラインが繋がっていくのが楽しいです。

最近はクライアントさんにある程度決まった題材をいただくことが多く、最初に聞いたときは現実的に描くには難しい題材であっても、

映画の中でそれをどう説得力のある形に落とし込むかを考える作業は好きですね。」

題材だけでは、非現実的だった部分も、取材を通して実際にあった話を聞きながら、それを現実的に描いていく。

素人目戦ではとても難しそうな作業ですが、その時間が楽しいと答えられた井上さん。

脚本を書いていて、「書けない!」と思う時はないのかと、失礼ながら聞いてしまったのですが、むしろ書くのは好きだそうです。

井上「題材が何も決まっていなくて、”題材選びからしてください”と言われると迷うことはありますが、テーマがある程度決まっていれば書けないということはあまりないです。」

商材案件なども含めると、これまで数えきれないほどの脚本を書かれてきたと思いますが、書くことで悩むことがあまりないとのこと。

書くことが本当にお好きなんですね!

撮影中は葛藤も…

楽しいと感じるのは撮影以外、とおっしゃられましたが、撮影中はどのような様子なのでしょうか。

井上「脚本上ではいくらでも理想を書けますが、実際に撮影するとなると予算や日数などの関係から、折り合いをつけていかないといけない部分もあるので、その面で葛藤することが多いですね。

理想と現実の中での葛藤を、撮影するギリギリまで考えてしまったり、時には撮影中も考えてしまい、苦しいこともあります。

やりたいことが100%できるわけではないなと……。

こんなこというと今まで満足のいく作品が作れていないと捉えられそうですけど(笑)。

そうではなく、撮影中はそんな葛藤があるということです。」

こんなものが撮りたいという理想と、実際の現実。

葛藤もありながらも、その中でできる最大限の作品を作られ続けてきたのですね。

作品を作る上で、大切にしていること

作品のジャンルでいうと、どのようなジャンルが得意なのでしょうか。

井上「得意なジャンルは、なんでしょう、全体的…ですかね。

人からは割りとサスペンスタッチな作品を評価してもらうことが多いですのですが、 僕自身はコメディが好きです。」

これまで多くのジャンルのものを作られてきたこともあるのか、特定のジャンルに対して得意不得意という意識はないようです。

その中でも、人からはサスペンスタッチに定評を得ていると、客観的な目線からも分析をされていました。

では、映画だけでなく、商材などが関わっているものも多く手掛けられてきましたが、その作品作りにおいて、心掛けていることはあるのでしょうか。

井上「商材が関わっているものはクライアントさんの意向が強いので、打ち合わせの段階でしっかり食い違いをなくしていけるよう、相手の意向を汲み取り相応しいと思えるものを積極的に提案していきます。

その方が後々お互いアンハッピーにならないかなと。」

基本的なことかもしれませんが、とても大切なことですよね。

求められていることにまず忠実になり、自分の意見を交えながら映像を作っていく。

プロとして、真摯に仕事に向き合う姿勢が、多様なニーズに応えていくために大切なことなのだなと感じさせてくれました。

No.4思い入れのある作品を挙げるなら、この2作品

これまで映画だけでなく、幅広く作品作りをされてきた井上さんですが、その中でも思い入れのある作品はどれかと尋ねてみました。

その後の仕事へと繋がった作品『夕暮れの催眠教室』

井上「特に思い入れのある作品は2つあるんですけど、1つ目はインディーズで撮った『夕暮れの催眠教室』という作品です。

この作品をきっかけに、映画の仕事のお声がけを頂くことが増えたのもありますし、

以前一緒に仕事をしたことがある、中村 夏葉(なかむら なつよ)さんにカメラマンを務めていただいたのですが、

本作は映像を評価されることが多く、彼女のおかげもあり、良い作品に仕上がったと思います。」

『夕暮れの催眠教室』は催眠術を使える女子高生と友だち、またその友だちが思いを寄せる男の子の三角関係を描いたストーリー。

友だちの恋を催眠術で成就させようとするものの、3人の思いが交差します。

カメラマンの中村さんとは、以前もタッグを組んだことはあったものの、撮影技術がレベルアップしており、驚かれたんだとか。

井上さんはスタッフの方とは、よくコミュニケーションをとられる方だとのことで、そのコミュニケーションも、作品の良い評価に繋がったのではないでしょうか。

※短編映画『夕暮れの催眠教室』(2016年)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 奨励賞受賞作品。

*予告映像→https://www.youtube.com/watch?v=NXFgA9h6mGI

自信に繋がった『新卒ポモドーロ』

井上「もうひと作品は、去年公開された『新卒ポモドーロ』です。

就活に関する企業側の葛藤などを描いたんですが、企業へ取材をしていくうちに、すごく奥が深いなと思いました。

労働に関するテーマとしては『就活』という短いスパンの物語ですが、シナリオを書き進めるうちに少子化や離職率など、日本社会全体の問題にも繋がっていると感じました。

そういうテーマを手掛けられたことで様々な視点が得られ、今後の活動に繋がる作品になりました。」

コロナ禍で就活の概況も変わってはきたものの、この作品を撮った当時の就活は、売り手市場。

企業側も採用しても内定を断られてしまい、いい人材を会社に迎え入れるのが難しいという時代における、企業側の切実さや葛藤を描いた作品です。

就活という単体のテーマではありながらも、日本社会全体の問題や、今の状況に繋がるテーマでもあることに気付かされたとのこと。

井上「この作品も中村さんに撮影を担当していただきました。

また、出演者の多くはオーディションで選ばせてもらったんですが、とてもいい俳優さんに出会えた作品でもあります。

自分としては、是非いろんな方に観ていただきたい作品です。」

信頼できるカメラマンの方と再度一緒のお仕事であったことと、良い俳優さんに出会えたこともあり、思い入れのある作品に仕上がったんですね。

※映画『新卒ポモドーロ』(2020年)

#観る就活プロジェクト第2弾作品。

観る就活プロジェクト第1弾は就活生の成長を描いた『40万分の1』。

*公式サイト→https://miru-shukatsu.jp/shinsotsu-pomodoro/

*#観る就活プロジェクト公式ツイッター→https://twitter.com/miru_shukatsu

*予告映像→https://www.youtube.com/watch?v=Bor-hLDYljg

No.5自分発のオリジナル作品を撮りたい

映画監督や脚本家としての今後の目標も伺ってみました。

井上「単純な目標かもしれませんが、自分の企画でオリジナルの作品が撮れるといいなと思っています。

日本全体でも、(単館系は別として)完全にオリジナルの作品って年にあっても数本だと思いますが、そんな中でオリジナルの企画が通るような立場を目指せたらと思っています。」

『新卒ポモドーロ』もオリジナルの作品ではありますが、題材は決まっていたとのこと。

企画の段階からのオリジナル作品に挑戦してみたい、またそういう作品を任される存在になりたいという明確な目標をお持ちでした。

これから挑戦してみたいジャンルはあるのでしょうか。

井上「ホラーですかね。1回やったことはあるんですが、

ホラーってアイデアも大事ですが演出力がかなり問われるジャンルなので、監督としてはやりがいがあるジャンルだと思っていますし、

もう一度チャレンジしてみたいという意欲を持っています。」

確かにホラーは演出ありき、なところがありますよね。

脚本が良くても、照明やカメラ次第で、怖さの演出が全く違うものになりそうです。

井上「ジャンル的にも、『ミッドサマー』や『アス』など、新たな可能性を感じる作品が出てきているので興味深いです。」

井上さんの挑戦を詰め込んだ新しいホラー作品、見てみたくなりました!

No.6まとめ

終始穏やかな表情で、ご自身の作品の魅力や、作品作りでやりがいを感じている部分を語ってくれた井上さん。

ひとつひとつの言葉からは、真摯に作品と向き合う姿勢と自信が伝わってきました。

これまで幅広い分野での作品作りに注力されてきたという経験と、その経験にプラスされる新しい視点や切り口で、今後も多様なニーズに応える作品を多く作り出してくれると思います。

そんな井上さんの最新作は、ショートショートフィルムフェスティバルと文化庁主催の日本博にて、短編映画「おばあさんの皮」が、

6月中旬ごろに上映される予定です。その後、YouTubeチャンネルにて、配信予定とのことなので、是非チェックしたいですね。

日本博・ショートショート フィルムフェスティバル & アジア主催・共催特別企画

*公式サイト→https://www.shortshorts.org/japanculturalexpo/

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https://directcreators.jp/pj/portfolio?id=37

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